西安につく頃、僕の体はあちこち痛みを訴えていた。 無理も無い、ベンチにクッションをつけたような座席で、窓枠に肘を掛けながら眠ったか起きてたか解らないような状態が何時間も続いたのだ。ふと我に返ると車内は凄惨な状況だった。三人がけのシートにはほとんど4人以上座っていたし、通路には座席や網棚から溢れた荷物と人が寝転がっている。子供はその通路でためらうことなく用を足し、その水溜りの中に食べかすや痰が浮いている。こんな状態が平然と起こっている、これが異文化というものなのか。 列車を降りると、強く寒い内陸性の風が僕の体を吹きつけた。時刻は8時6分。昨日知り合った大学生の楊さんがタクシー乗り場まで案内してくれる。楊さんは僕を自分の大学寮まで案内してくれるようだ。 楊さんと大学の友人達は、本当に親身に僕をもてなしてくれた。中国武術が見たかった僕にビデオを借りて見せてくれたり、学食でとった昼食は「お前は客人だから」と言って代金を受け取ろうとはしなかった。今まで冷たい対応が多くて居心地の悪さを感じ始めていた僕にとって、その優しさは中国という国、いや物事の全てを一つの角度からだけで見てはいけないということを思い知らされた。 彼らの歓待を受けながら、ようやくこの地にいる友人と連絡が取れる。僕は楊さん達に厚く礼を言うと、彼らは笑って「また会おう!」と言ってくれた。