理想と妥協
よく「理想の人」とか「理想的な将来」とか言う言葉を耳にする。
「オレの理想は……」とか「理想と違うんだよねぇ……」とか。
どんなことでも、理想はあったほうが良い。というか、理想は持つべきである。
しかし理想を持ったとき、それが叶うと信じてはいないだろうか。
結論から言えば、自分の理想にぴったりと当てはまる事柄など、無いのである。
それは、理想はあくまで想像の産物であって、現実には存在しないからだ。
こういうと、何を夢のないことを……と思うかもしれないが、夢を見るのと現実を見ないのは同じではない。
では何故理想を持ったほうがいいというのか。
それは「妥協」があるからである。
妥協というと聞こえが悪いが、妥協は人間にとって大事な要素である。
妥協がなければ、なんと融通の利かない人になってしまうことか。
非の打ち所の無い理想を設定はするが、そこに辿り付くことはない。
しかし、自分の満足する場所までは行くことができるのである。
それが「妥協」なのだ。
例えば仕事に置き換えてみる。
仕事の理想を考えると、やりがいがあり、疲れが後に残らず、職場はみんな気のいい人間ばかりで、自分の都合に合わせて休みがとれ、その上給料が高い。これはまさに理想といえるだろう。
しかし、現実的に見て、これはあり得ない。
そこで、「給料は安いが、やりがいがある」「やりがいがあるが、肉体的にハード」「すごく楽しいが、なかなか休みがとれない」など、どこか部分的に欠けていても、ほかの要素がそれを補えるものであれば満足できるだろう。
異性で言えば、「容姿はぱっとしないが、性格がものすごく良い」「稼ぎは悪いが、明るく優しい」といったところか。
ただ、理想的なものなどないからといって、悲観的になり、理想を求めることを諦めてしまうのは良くない。
理想がなくなると、人は努力をしなくなり、生きる活力さえ弱くなってしまう。「なんでもいいや」「どうでもいい」なんて思うようになったら、気をつけなければいけない。
逆に、妥協をしらなすぎるのもよくない。少しでも気に入らない点があればやめる、という姿勢は、いろんなチャンスを逃してしまう。
理想は、追い求めても辿り付けないから理想なのである。
理想の中に効果的に妥協点を見つけることで、より幸福に生きることができるだろう。
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