2000年2月28日。
無謀にも名古屋・東京間を原付で駆け抜けた男がいた。
テントと地図を背中に積み、冬真っ只中の国道1号線を愛車YB−1が爆走する!
3rd run 3月1日(水)前編 富士〜御殿場 35.1km
翌朝目が覚めたのは6時50分。目覚ましをセットした時刻は7時30だったのに! 本当はゆっくりと眠りたかったんだけど、なんと寒さで目が覚めてしまったのだ。さすがに薄布一枚のテントでは無謀過ぎたらしい。
しかも起きてみて更に驚いた。寝てる間に呼吸や地熱などの湿気が溜まり、それが冷やされてテントの内側にびっしりと氷が張り付いていたのだ! これで今どれほど寒いかが予想できた。
とにかく、テントをバイクに引っ掛けてしばらく朝日に晒す。その間に寝袋やほかの装備を再びリュックに詰め込んで、ちょっと休憩。テントがある程度乾いた頃、時計を見るとまだ8時前。そろそろ吹きっ晒しのキャンプ場の寒さにも耐えられなくなってきた。朝は9時に出勤するという管理人など、とても待ってられない。
申し訳ないとは思いつつ、使用料500円を踏み倒してとっとと出発してしまった。
さて、本来ならここで再び南下してもとの道に戻り、国道1号に乗って行くところだが、そんなことをしていたらかなりの回り道になってしまう。道の駅で手に入れた地図によると、国道469号とうものが、ここから富士の中腹を横切って御殿場、箱根へと続いているではないか! こうしてYB−1は、当初のコンセプトとは少しずれるが後戻りすることなく新しい道を切り開く事になった。
ここから見える風景がまたすごいのなんの! なだらかな斜面を横切って行くのだが、左手に雄大な富士山、右手には青く広がる駿河湾と、まさに両手に花状態で、これでこそ寒い思いをしてここまで来た甲斐があったなぁ、としみじみ思わせるものだったよ。
しかし行けども行けども山道ばかり。富士サファリパークはあれど、コンビにはおろか民家の一つも見えてこない。朝食を抜いてきたので、さすがに腹も減ってくる。そんななかでようやく見つけた看板は「コンビニ→○km」。数キロ先のコンビニの看板が出てるなんて……。結局朝食にありつけたのは、すっかりふもとに下りて御殿場市街地に入った9時頃になってしまった。
市内の農協の駐車場で細々と菓子パン二つをむさぼり終わって出発すると、少し行ったところで「御殿場温泉会館」なる看板を発見! 家を出てからまだ風呂に入っていなかったし、冷えきった身体を暖めるのにもちょうどいい! ということで、案内に従ってどんどん山道を登り始めた。
案内板が出ているのに何故か色々迷いつつも、やっと辿りついた温泉会館はなんと閉まっているではないか! 「よりにもよって定休日か!?」と思ったが、どうやら開館前だったらしい。無理もない、まだ9時45分だ。バイクを駐輪場に止めて待っていると、なにやら続々と爺さん婆さんが登場。いつのまにか扉の前には10人ほどの列が出来始めた。
そして待ちに待った開館。なだれのような勢いは無かったが、ぞろぞろと地元民の列にまぎれて脱衣場へ向かう。ロッカーを二つも占領する大荷物はさぞ迷惑だろうが、大目に見て欲しい。
しかし、浴室に入ってまたもやビックリ! 浴槽の奥の壁は大きな一面のガラスばりになってるんだけど、その向こうにモロ富士山なのだ! よく銭湯の壁に富士山が描かれてたりするけど、それの実写板という感じで、大きさもまさにぴったり! うぅむ、2時間で500円を取る価値があるというもの。さすがに写真が撮れないのが残念だった。
時間一杯とはいかなかったが、たっぷり一時間入浴してから会館を出た。駐車場で風呂上りのジュースをお約束に飲む。さぁて、いよいよ箱根越えだ!
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