route 1


2000年2月28日。
無謀にも名古屋・東京間を原付で駆け抜けた男がいた。
テントと地図を背中に積み、冬真っ只中の国道1号線を愛車YB−1が爆走する!

5th run 3月2日(木)〜3日(金) 東京インターミッション

 さて、距離にして約400kmという長い道のりを経てやっと東京にたどり着いたわけだ。サイキックもいろいろ用事があり、夕方に待ち合わせをするとして、昼間は完全フリーとなった。
 場所は首都・東京。しかも原付だから、自由にどこでも行ける。そこでオレが向かった場所は……
 東京大学だった。
 なぜかは特に理由はないが、大学生になってほかの大学に興味があったし、あの有名な安田講堂を見てみたいというのもあったわけで。
 正門には関係者以外立ち入り禁止と書かれていたが「大学なんだぞ、そんなバカなことあるかい」と、そのまま原付ごと突入。適当に自転車の隣に停車して、講堂付近まで歩く。ちょうど講堂の地下に食堂があったから、昼食をとることにした。東大の学食で昼飯。おおっ、なかなかグッドアイディアではないか!
 学食の値段も味も、他の大学と大して差はなかったが、ほかのお客を見ると、気のせいかメガネのインテリ系が多かったような。単なる先入観だろうか……?

Tokyo-Univercity

 たとえば若者向けの街は他にいくらでもある。渋谷、原宿や、お台場とかね。でも次に向かったのはなぜか上野。上野動物園の上野。西郷さんがいる上野。なぜだろう……?
 すごく天気もよかったし、ひとつ上野公園を散歩しよう。と公園内を歩いたのはいいんだけど、なにせこちらは原付持ち。いかに三月といえど、小春日和に80kgの原付を引っ張って公園を縦断すればあったかいどころかもう汗だく。公園端の弁天島に着くまでにはヘロヘロになっていた。

 そして最後に行ったのは浅草だった。今思うと本当にもったいないような気もするが、当時はそれで満足だったんだろう。ともかく、定番の雷門を写真に収めて、通りを練り歩く。途中だんご屋でだんごを食べたりしてゆっくりくつろいだあと、何気に浅草寺に寄ってせっかくなのでおみくじを引いてみることにした。これからの旅の無事を祈ってえいっ! と引き抜く。出た運勢は……
 「凶」
 おいおい、凶て……

願望:叶いにくいでしょう。
病気:危ういでしょう。
待ち人:現れないでしょう。
旅行:良くないでしょう。
結婚:全て悪い結果を生むでしょう。
すべてわろし。

 うーむ。
 あんまり占いとか気にしないほうだけど、さすがに「凶」はきっついなぁ。実際昨日は待ち人がなかなか来なかったわけだし。という嫌なおみくじと予感は、名古屋への帰路において見事にあたってしまうわけなんだけどね。

Jambo chochin!

 そうこうしているうちに、ようやくサイキックも時間があいたので飲みに行くことにした。実はこの日は彼の誕生日なので、わざわざ日程を合わせたというのもある。行く場所はもちろん(?)新宿歌舞伎町!

 両サイドに艶々しいネオンが立ち並ぶ不夜城・歌舞伎町。あちこちで飲み屋や風俗の呼び込みが激しく行われている。適当に安そうな店を探すと、白木屋に入ることにした。まぁメシを食いながら久々の再開ということでいろいろ話が弾む。アルコールもちょろちょろ飲んでいた。
 店を出たあと、サイキックのおすすめだという風俗のお店に行くことになった。  風俗!
 人生初である。のぞき部屋というやつで、円形のステージの周りがそれぞれ個室になっていて、ステージとはマジックミラーで仕切られている。そのステージの上で女の人が踊る(脱ぐ)というわけだ。こちらは見るだけ。
 当初期待していたが、見終わってみると案外あっけない。まぁ1500円だし。貴重な体験ができたんでよしとするか。

 その後向かったのは、歌舞伎町ゴールデン街といわれる、今は古びたスナック街。なんでも昔はかなり流行っていたらしいが、狭い路地にびっしり並んだ小さな店には、とても繁盛しているような雰囲気はない。その中のひとつ「ロンリー」に入った。店は恐らく10人入れるかどうかという広さだった。かなり映画関係の有名人も来たらしく、マスターはとある映画のマスターの設定に大いに利用されたらしい。なかなかいい店だったけど、閉店が早かったのですぐに出る羽目になった。
 別の店を探してぶらぶら路地を歩いていると、不意に路地裏から男が飛び出してきた。かなり酔っ払っている。男はオレたちを見るといきなり言った。「よぉし、飲みに行くぞ」
 こうして知らないおじさんに連れられてジャズバーに入った。おじさんも映画に詳しく、サイキックとふたりで話が盛り上がる。オレは他のお客と話したり酒を飲んだりしていた。適当に飲んで、再びおじさんが動く。
 次は「しの」という店だった。年増のおばさんと若いお姉さんがふたりでやっている店だ。入って何を頼もうか迷っていると、「しの」という名のママの方にいきなり怒鳴られた。「迷ってんじゃねーよ早く決めろよ!」あまりの口調に驚いていると、今度は奥のほうで騒いでいるおじさんたちに「おめーらうっせーんだよ、静かにしろ!」どうやらこれが芸風らしい。慣れるとけっこう面白かったりする。
 しかし酒はもうビール一杯が限界だった。おじさんもいつのまにか別グループと騒いでこちらは浮いてるし。しかもこのおじさん「割り勘だぞ」とせこい念を押して、自分はがばがば酒を飲んでいる。もう帰るということで勘定するときに、お姉さんのほうが割り勘に同情してくれ、かなりまけてくれた。

Sleepless town

 結局その後カラオケ行ったりマックへ行ったりで朝まで遊んだ。だからサイキック宅へ帰ってひと寝入りしたらもう夕方になっていた。その日は立教大学に行ったり池袋周辺をぶらぶらしたりで過ぎていく。実際まだ少しアルコールが残っていたからぼーっとしていたのもある。帰りにコンビニに寄って、カップラーメンを買った。明日からまたコクイチの旅が始まるので、非常用にと思ったのだ。そしてこの判断のお陰で後になって命拾いすることになるとは、この時点ではまだ想像もつかなかった。
 歌舞伎町でずいぶんお金を使ったので、今夜は適当に夕飯を食べる。翌朝は八時くらいに出発したかったから、これでサイキックともお別れだ。テレビの天気予報では、雨が降るということらしい。ふと脳裏に昨日のおみくじが浮かぶ。かなりいやな予感がしたが、もちろんその予感は見事に的中するのであった。

 布団の暖かさを噛み締めながら、明日に向かっての休息を取った。


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